改善基準告示とは?目的や対象者・改善基準のポイントも解説

改善基準告示は、トラックドライバーやタクシードライバー、バスの運転手など、車を運転する労働者の労働時間に関する基準を示すものです。改善基準告示を守り、ドライバーに過剰な負担がかからない経営を目指しましょう。

改善基準告示の内容や守らない場合のデメリット、労働基準法との関係などについて解説します。

改善基準告示とは?

物流トラック

改善基準告示は、トラック、タクシー、バスなどの4輪車を運転する人の働き方の基準を示すものです。トラック、タクシー、バス、それぞれについて定められていますが、本記事では主にトラックの改正基準告示について解説します。

概要・目的

改善基準告示とは、平成元年に告示された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」のことです。

名称の通り、長時間労働になってしまいがちなドライバーの労働時間を改善するために拘束時間や休息期間などに関する基準が示されています。

改善基準告示は、これまでもドライバーの労働時間の実態調査などを元に改正を重ねられてきました。ドライバーを雇用している事業主は、最新の改正基準告示の内容を把握し、遵守する経営を行う必要があるでしょう。

対象者

改善基準告示の対象者は、企業から給与を受け取っている従業員のうち、主に4輪以上の自動車の運転業務を担っている人です。具体的には、会社に雇用されているトラックのドライバーやタクシードライバー、バスの運転手などが該当します。

ただし、対象はあくまでも従業員ですから、主に運転業務を行っていたとしても、会社の社長などは対象外です。また、主に運転をしている人が対象なので、車を運転することがある営業職の人や、人が足りないときに臨時で運転手をすることがある人なども対象にはなりません。同様に、仕事でバイクを運転している人なども、4輪の自動車の運転手ではないので含まれません。

いつから改正されるのか

改善基準告示は、平成元年に制定された後、複数回の改正が行われています。直近では、令和4年の改正が予定されています。

改善基準告示のトラック部会は、令和3年4月から見直しの議論をスタートし、令和3年10月には2回目の実態調査を行いました。この後は、令和4年12月頃には改善基準告示の改正が行われ、令和6年4月に施行予定です。

上記は、改善基準告示の見直しのスケジュールとして厚生労働省が公開している予定です。令和4年9月にも「第10回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会」が行われ、トラックの改正基準告示見直しに関する資料が配布されています。

着々と準備が整っているため、ほぼ間違いなく令和4年12月に改正が行われると考えられます。

改善基準告示の詳しい改正内容については、以下の記事で詳しく説明していますので、あわせて参考にしてください。

改善基準告示のポイントとなる主な項目

改正基準告示では、トラック、タクシー、バス、それぞれのドライバーに対して、拘束時間や労働時間、休息時間、運転時間などの基準が細かく示されています。ここでは、トラックドライバーの労働時間等に関する主な基準と定義を紹介します。

なお、ここで示す時間の基準は、令和4年10月現在適用されているものです。予定されている改正後の基準ではありません。

1.拘束時間

トラックドライバーの拘束時間は、以下のように定められています。

1日……原則13時間、最大16時間(15時間を超えるのは週2回まで)

1ヵ月……293時間(労使協定を結べば最大6ヵ月、320時間まで延長可)

1年……3,516時間

なお、拘束時間とは、出社してから退社するまでの、自分の自由にできない時間を指します。所定労働時間、時間外労働時間などのほか、休憩時間も拘束時間に含まれます。トラックドライバーの場合、運転中の休憩や荷待ちなどの時間が発生することがありますが、このような時間も拘束時間です。

2.労働時間

労働時間とは、所定労働時間と時間外労働時間、休日出勤時間などを足した時間です。休憩時間は含まれません。

なお、所定労働時間は、会社が定めている基本の労働時間です。8時始業、17時終業、休憩1時間の会社なら、所定労働時間は8時間です。

労働基準法では原則1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと定めています。これを法定労働時間と呼びます。

3.休息時間

休息時間とは、ドライバーが自宅などで完全に仕事から解放されて過ごせる自分だけの時間です。

運転中の休憩や荷待ち時間などは、仕事の連絡などが入る可能性があるでしょう。そのため、仕事に関連することから解放され、疲れを癒す休息時間の基準が定められています。

トラックドライバーの休息時間は、最低8時間以上です。これは、拘束時間の上限が16時間だからです。ただし、15時間を超えられるのは週2回までですから、それ以外の日の休息時間は9時間ということになります。

また、原則的な拘束時間は13時間なので、休息時間も原則11時間が望ましいといえるでしょう。

4.時間外・休日労働

時間外労働や休日労働については、改善基準告示ではなく、労働基準法に上限が定められています。労働基準法を遵守した経営を行わなければいけません。

そもそも、時間外労働や休日出勤は、イレギュラーな労働です。本来であれば、就業時間中に業務を完了させる必要がありますが、なかなかそうもいかないこともあるでしょう。そこで、労使間で36協定を締結して労働基準監督署に届け出ることで、一定の時間外労働が認められています。

労働基準法では、時間外労働の上限を原則月45時間、年360時間までとしています。それを超える労働を行わせる臨時的な理由がある場合は、特別条項付きの36協定を締結して届出をしなければいけません。

なお、現状ドライバーに対する残業時間の上限は設定されていません。しかし、2024年4月からは、時間外労働時間の上限が年間960時間になります。

5.運転時間の制限

運転時間とは、実際にトラックを運転している時間のことです。運転時間が長時間に及ぶと、集中力が欠けたり、目が疲れてしまったりして事故が起こりやすくなります。このようなことがないように、運転時間の基準が定められています。

1日の運転時間の基準は、始業時刻から48時間のうち、平均で1日あたり9時間です。さらに、2週間の平均で1週間あたり44時間以内とされています。

また、連続して運転できる時間は4時間以内です。4時間を超える場合、1回あたり連続で10分以上、合計30分以上の休憩が必要です。

本記事ではトラックについて紹介しましたが、タクシーやバスの改善基準告示の細かい項目や規則はそれぞれ異なります。

改善基準告示違反は厳しい処分に繋がる

物流トラック

改善基準告示は、厚生労働省による基準ですが、法律ではありません。「告示」の基準に違反した場合、一体どうなるのでしょうか。

改善基準告示に違反した際の罰則の有無や、実際に違反した場合にどのような処分が行われたのかを紹介します。

改善基準告示は労働基準法と違い法律ではない

改正基準告示は、法律ではありません。あくまでも、労働時間に関する基準です。そのため、違反しても法律を破ったときのような罰則はありません。しかし、違反した場合、労働基準監督署から是正が求められますし、行政処分の対象になることもあります

なお、労働基準法も、改善基準告示と同様に労働時間に関する決まりを定めているものです。労働基準法は法律ですから、違反すると罰則を受ける可能性があります。

労働基準法と改善基準告示、どちらも遵守し、労働者の健康と安全を守りましょう。

実際にあった処分例

改善基準告示に違反した事業者には、行政処分が下されるケースがあります。実際に、乗務時間告示の遵守違反といった理由で30日間の事業停止や、30日車の車両の使用停止などが行われているケースもあります。

これらの処分は、監査に基づいて行われていますが、監査のきっかけは、通常監査のほか、労働局からの通報や苦情、運行管理者特別講習未受講などさまざまです。

どのようなきっかけで指導や処分を受けるかわかりませんから、日頃から基準を守るようにしましょう。

「TUMIXコンプラ」は改善基準告示を遵守するための業務改善策として有効

改善基準告示を遵守するためには、勤怠管理や労務管理をしっかり行う必要があります。それぞれのドライバーの労働時間や運転時間、休憩時間などを正確に把握していなければ、基準を守ることもできません。

しかし、運転中のドライバーは、人の目が多くある社内で働く従業員に比べ、労働時間の把握が困難な職業です。業務実態を把握するために、正確性の高い出退勤システムや、デジタコの実績取り込み、運行結果の分析などを活用しましょう。

運送業に特化した勤怠・労務管理システムであるTUMIXコンプラなら、簡単にドライバーの勤務実態を把握できます。デジタコの数値から、1日の拘束時間や運転時間、月の拘束時間などを自動集計できる機能もついていますから、改善基準告示の遵守に役立ちます。

(まとめ)改善基準告示のポイントを押さえて対応しよう

改善基準告示は、主にドライバーの労働時間に関する基準を示すものです。数字だけを見ているとわかりにくく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえて実務に落とし込めば、それほど難しいわけではありません。ドライバーの心身の健康を守り、安全に走行するために、改善基準告示を遵守した経営を目指しましょう。

まずは、労働時間の実態を正しく把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。