COLUMお役立ちコラム
kintone AIがうまく使えない原因と対策|回答精度を上げるデータ整備・クレジット管理・権限設定のコツ
「kintone AIの検索AIを作ってみたけれど、思ったような回答が返ってこない」「月の途中でAIクレジットがなくなってしまった」「最初は話題になったのに、社内であまり使われていない」という方は多いのではないでしょうか。
kintone AIは、サイボウズ社が提供する業務改善プラットフォーム「kintone」に搭載されたAI機能です。便利な一方で、仕組みや仕様を知らないまま使うと、「AIが使えない」と感じてしまう場面も少なくありません。
本記事では、kintone AIを導入した後によくあるつまずきを取り上げ、その原因と対策をまとめました。回答の精度を上げるデータ整備のポイントから、権限設定、クレジット管理、社内に定着させる運用の工夫まで、ぜひ参考にしてください。
【この記事で分かること】
- kintone AIで「うまく使えない」と感じる主なパターン
- 検索AIの回答精度が低くなる原因と対策
- 権限設定や利用範囲に関するつまずきの解消方法
- AIクレジットを使い切らないための工夫
- kintone AIを社内に定着させる運用のコツ
kintone AIで「うまく使えない」と感じる主なパターン
kintone AIのつまずきは、AIの性能そのものよりも、データの入れ方や設定、使い方に原因があるケースがほとんどです。まずは、よくあるパターンを一覧で確認してみましょう。
よくあるつまずき一覧
| よくある症状 | 主な原因 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 検索AIが的外れな回答をする | 検索の対象にならないフィールドに情報がある/情報が入力されていない | 文字列フィールドに情報を集め、入力ルールを整える |
| 「情報が見つからない」と回答される | 質問があいまい/閲覧権限のないデータを探している | 質問を具体的にする/権限設定を確認する |
| 人によって回答が違う | ユーザーごとの閲覧権限の違い | アプリ・フィールドのアクセス権を見直す |
| 月の途中でクレジットがなくなる | 利用者が多い/聞き直しが多い | 利用範囲を段階的に広げ、質問をテンプレート化する |
| 集計結果の数値が合わない | AIは計算や集計が得意ではない | 数値はkintone標準の集計機能で確認する |
| 社内で使われなくなる | 使いどころが決まっていない/推進役がいない | 活用シーンを1つに絞り、推進役を決める |
ここからは、それぞれの原因と具体的な対策を詳しくご紹介します。
検索AIの回答精度が低い原因と対策
kintone AIの中でも「使えない」と感じやすいのが検索AIです。検索AIは、指定したアプリのデータをもとに回答を作る仕組みのため、データの入れ方と質問のしかたで結果が大きく変わります。
検索の対象にならないフィールドに情報が入っている
検索AIが検索の対象にするのは、主に「文字列(1行・複数行)」「リッチエディター」「リンク」「添付ファイル」などのフィールドです。数値や日付、ドロップダウン、ラジオボタン、チェックボックスといったフィールドは、検索の対象外とされています(2026年9月時点)。
たとえば、問い合わせの種別をドロップダウンだけで管理していると、「〇〇に関する問い合わせ」と検索AIに聞いても、種別の情報をもとに探すことはできません。検索AIで探したい情報は、「件名」「問い合わせ内容」「対応内容」などの文字列フィールドにもしっかり書いておくのがポイントです。
なお、添付ファイルの内容も検索の対象になりますが、1つの添付ファイルフィールドあたり参照される文字数には上限(合計で約1万文字程度)があるとされています。長いマニュアルは、章ごとにレコードを分けて登録すると、必要な情報が参照されやすくなります。
参照されるのは関連度の高い上位5件のレコード
検索AIは、質問との関連度が高いと判断した上位5件程度のレコードをもとに回答を作成するとされています。そのため、「すべての案件の中から条件に合うものを全部出して」といった、大量のレコードを網羅的に調べる質問には向いていません。
網羅的に調べたい場合は、一覧画面の絞り込みや、次の章でご紹介するレコード一覧分析AIを使い分けると良いでしょう。検索AIは「過去の似た事例を探す」「規程やマニュアルの該当箇所を探す」といった使い方が得意です。
必要な情報がそもそも入力されていない
当然ですが、kintoneに登録されていない情報について、AIは答えられません。「対応内容」や「原因」の欄が空欄のレコードが多いと、検索AIが参考にできる情報が少なくなり、回答の精度が下がります。
対応が完了したら必ず「原因」と「対応内容」を記入する、備考欄ではなく決まったフィールドに書くなど、入力ルールを決めて記入率を上げることが、回答精度を上げる一番の近道です。
質問が短すぎる・あいまい
「返品」「ログイン」のように単語だけで質問すると、AIが意図をくみ取れず、的外れな回答になりがちです。質問には、背景と、知りたいことと、回答の形を含めるようにしましょう。
| あいまいな質問 | 具体的な質問 |
|---|---|
| 返品について | 購入から30日を過ぎた製品Aの返品依頼に、過去どのように対応したか教えて。条件と手順を箇条書きで |
| ログインできない | 「ログインできない」という問い合わせの主な原因と、それぞれの対応方法を教えて |
「回答が表示されない」「人によって結果が違う」ときの原因と対策
「自分では回答が出るのに、同僚が聞くと出ない」「設定したはずなのに使えない」といった場合は、権限や利用範囲の設定に原因があることが多いです。
閲覧権限のないデータは回答に使われない
検索AIを「すべてのユーザー」に公開していても、元のアプリやフィールドを閲覧する権限がないユーザーには、そのデータは回答に反映されないとされています。つまり、同じ質問をしても、ユーザーの閲覧権限によって回答が変わる場合があります。
これは、見せてはいけない情報がAI経由で漏れないための大切な仕組みです。「必要な人に回答が出ない」ときは、アプリやフィールド、レコードのアクセス権の設定を確認してみましょう。逆に、AIを導入する前には、閲覧権限が正しく設定されているかを見直しておくと安心です。
機能ごとの利用ユーザー設定を確認する
kintone AIは、管理者が機能を有効にしたうえで、機能ごとに対象アプリや利用できるユーザーを設定する仕組みです。「メニューにAIが表示されない」という場合は、次の点を確認してみてください。
- kintone AI管理の画面で、その機能が有効になっているか
- 機能ごとの設定で、対象のアプリやスペースが追加されているか
- 利用できるユーザー・組織・グループに、自分が含まれているか
- 契約コースがスタンダードコースまたはワイドコースか(ライトコースは対象外)
対応していない場所で使おうとしている
機能によっては、使える場所に制限があります。たとえば、スレッド要約AIはゲストスペースでは利用できません。社外のメンバーとやり取りしているスペースで使いたい場合は、この点に注意が必要です。
AIクレジットがすぐなくなるときの対策
kintone AIは、毎月付与される「AIクレジット」の範囲内で利用します。クレジットは契約環境全体で共有され、上限に達するとその月はAI機能を利用できなくなるため、計画的に使うことが大切です。
データ活用AIは1回10クレジット、使い方で差が出る
クレジットの付与量と消費量は次の通りです(2026年9月時点)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 付与量(月あたり) | スタンダードコース:契約ユーザー数×500クレジット ワイドコース:契約ユーザー数×1,000クレジット |
| 検索AI・レコード一覧分析AI・スレッド要約AI | 1回あたり10クレジット |
| アプリ作成AI・プロセス管理設定AI・アプリ設定レビューAI | 1回あたり1クレジット |
| リセット | 毎月月初(未使用分の繰り越しは不可) |
データを読み取る3つの機能は消費量が大きいため、同じ質問を何度も聞き直したり、目的のない試し使いを繰り返したりすると、あっという間にクレジットが減ってしまいます。
利用者と対象アプリを段階的に広げる
最初から全社員に開放すると、試し使いだけでクレジットを使い切ってしまうことがあります。まずは効果が出やすい部署やアプリに絞って始め、使い方が固まってから対象を広げていくのがおすすめです。
質問のテンプレート化と、月の途中での残量確認
うまく回答が得られた質問は、テンプレートとして社内で共有しましょう。聞き直しが減り、クレジットの節約につながります。また、クレジットの管理担当者を決め、月の半ばに残量を確認する習慣をつけておくと、月末に使えなくなる事態を防げます。
サイボウズ社は、クレジットを追加購入できる有償オプションの提供も予定しています。利用量が多い企業は、最新情報をkintone公式サイトで確認しておくと良いでしょう。
分析結果・回答が間違っているときの対処法
AIの回答には、誤りが含まれる可能性があります。特に、もっともらしい文章で誤った内容を答えてしまう「ハルシネーション」には注意が必要です。
数値の集計はkintone標準の集計機能で確認する
AIは文章の要約や傾向の把握は得意ですが、正確な計算や集計は得意ではありません。「今月の売上合計は?」「件数は何件?」といった数値は、AIの回答をそのまま使わず、kintone標準のグラフや集計機能で確認するようにしましょう。
レコード一覧分析AIは「傾向をつかむ」「要点を整理する」ために使い、正確な数値は集計機能で出す、という使い分けがポイントです。
AIの回答は「たたき台」として人が確認する運用にする
AIの回答や分析結果は、同じ指示でも毎回少しずつ異なる場合があります。社外に出す資料や、経営判断に使う情報については、必ず元のデータを人が確認してから使うルールにしておくと安心です。検索AIの回答に、参照元のレコードが表示される場合は、元のレコードを開いて内容を確かめる習慣をつけましょう。
社内に定着しないときの運用の工夫
機能や設定に問題がなくても、「最初だけ使われて、その後は使われなくなる」というケースもあります。社内に定着させるためには、運用面の工夫が欠かせません。
最初の活用シーンを1つに決める
「何にでも使えます」と案内するだけでは、現場は何に使えばよいか分かりません。「社内規程の問い合わせは、まず検索AIに聞く」「週次の営業会議の前に、案件一覧をAIで要約する」など、具体的な活用シーンを1つ決めて、業務の流れに組み込むのが効果的です。
推進役を決めて、うまくいった質問例を共有する
各部署にAI活用の推進役を1人決め、うまくいった質問例や使い方をスペースで共有してもらうと、利用が広がりやすくなります。「こう聞いたらうまくいった」という身近な成功例は、マニュアルよりも現場に伝わりやすいものです。
標準機能で足りない場合は外部AIとの連携も検討する
「複数のアプリのデータを組み合わせて分析したい」「結果をチャットツールに自動で通知したい」といった使い方は、kintone AIの標準機能だけでは難しい場合があります。そのような場合は、外部の生成AIとの連携も選択肢になります。詳しくはkintoneとClaude(AI)を連携する方法を解説した記事をご覧ください。
kintone AIの基本的な使い方や、業務別の活用例については、kintone AIの使い方ガイドや業務別活用例の記事でも詳しくご紹介しています。
まとめ|kintone AIのつまずきは、仕組みを知れば解消できる
kintone AIが「うまく使えない」と感じる原因の多くは、AIの性能ではなく、データの入れ方や権限の設定、使い方にあります。検索AIが検索の対象にするフィールドや、参照するレコードの件数といった仕組みを知り、入力ルールや質問のしかたを工夫するだけで、使い勝手は大きく変わります。
あわせて、クレジットの計画的な管理や、活用シーンを決めて社内に広げる運用の工夫を取り入れることで、kintone AIを業務に定着させることができます。まずは本記事でご紹介したつまずきの中から、自社に当てはまるものを1つ選んで見直してみてはいかがでしょうか。
トムスでは、kintoneのアプリ設計やアクセス権の見直しから、kintone AIを活かすためのデータ整備、社内での運用ルールづくりまでサポートしています。「kintone AIを導入したものの、うまく活用できていない」という方は、トムスのサポートチームまでお気軽にご相談ください。
監修者
中川 豊章
株式会社トムス 代表取締役
