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COLUMお役立ちコラム

2025年7月17日

福祉事業におけるNotebookLMの可能性:情報管理から業務効率化、職員育成まで

目次

1. はじめに:福祉現場が抱える情報管理と業務効率化の課題

日本の福祉現場は、利用者一人ひとりの多岐にわたるニーズに応えるため、日々膨大な情報と向き合っています。個別支援計画、日々の活動記録、アセスメント、医療情報、家族との連絡記録、そして各種研修資料や社内規定など、その種類は枚挙にいとまがありません。これらの情報は、利用者のQOL(生活の質)向上に不可欠である一方で、その適切な管理と共有は現場職員にとって大きな負担となっています。

「あの書類はどこに」「〇〇さんの過去の記録を見たいのに見つからない」「新しい職員にこの情報をどう効率的に伝えるか」――こうした声は、多くの福祉施設で聞かれる共通の課題です。情報が散逸しているために、必要な情報を見つけるのに時間がかかったり、情報共有に手間取ったりすることで、本来利用者の支援に費やすべき時間が削られてしまう現状があります。また、個別支援計画の策定や報告書作成など、根拠に基づく質の高いドキュメント作成にも多くの労力が費やされています。

これからの福祉現場には、テクノロジーを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠です。DXは、単なるITツールの導入に留まらず、業務プロセスそのものを見直し、より効率的で質の高いサービス提供を実現するための変革を意味します。本記事では、Google Workspaceとシームレスに連携する革新的なツール「NotebookLM」が、いかに福祉事業の情報管理と業務効率化、さらには職員育成に貢献できるかをご紹介します。

2. NotebookLMとは?福祉事業者が知るべき基本機能

NotebookLMは、Googleが開発したAIを活用した情報整理・分析ツールです。その最大の特徴は、ユーザーが提供した大量のドキュメント(「ソース」と呼びます)を読み込み、それらの情報に基づいて要約を作成したり、質問に答えたり、新たなアイデアを生成したりできる点にあります。特定のウェブページやPDF、Google ドキュメントなど、様々な形式の情報をソースとして取り込むことができます。

重要なのは、NotebookLMが「事実に基づいた情報」に特化しているという点です。巷に溢れるAIツールの中には、時に不正確な情報を生成するハルシネーション(幻覚)の問題が指摘されることがありますが、NotebookLMはあくまでユーザーが提供したソースドキュメント内の情報のみを参照して応答を生成します。これにより、福祉現場のような正確性が求められる環境でも安心して利用できます。

そして、福祉事業者にとって特に注目すべきは、Google Workspaceとのシームレスな連携です。すでにGoogle Workspaceを導入している施設であれば、Google Driveに保存されている既存のドキュメントを直接NotebookLMのソースとして活用できます。これにより、新たなシステムへのデータ移行の手間が大幅に削減され、導入障壁が低くなります。もちろん、Google Workspaceが提供する高水準のセキュリティとプライバシー保護はNotebookLMにも適用されており、利用者様の重要な個人情報も安心して管理できます。

3. 福祉事業におけるNotebookLMの具体的な活用シーン

NotebookLMは、福祉現場の多岐にわたる業務において、その真価を発揮します。具体的な活用シーンを見ていきましょう。

3.1. 利用者情報の効率的な管理と個別支援計画の策定

福祉事業の中核となるのが、利用者一人ひとりに合わせた個別支援計画の策定です。過去の支援記録、アセスメントシート、医師の診断書など、膨大な情報を参照しながら計画を立てる作業は、多大な時間と労力を要します。

NotebookLMを使えば、これらの利用者関連ドキュメントをすべて「ソース」として取り込むことで、特定の利用者に関する情報を瞬時に検索・要約できます。例えば、「〇〇さんのこれまでの利用状況と支援目標は?」「〇〇さんの身体状況について医師はどのような見解を示しているか?」といった質問に、NotebookLMはソースに基づき即座に回答します。

これにより、過去のデータや専門家の意見を根拠として、より個別最適化された支援計画を効率的に作成することが可能になります。また、計画の内容について職員間で議論する際も、根拠となる情報を瞬時に提示できるため、共通認識の形成がスムーズになります。

3.2. 職員の研修・OJTの強化と知識共有

新人職員の育成は、どの福祉施設にとっても重要な課題です。複雑な社内規定、多岐にわたるサービス内容、利用者対応のノウハウなど、覚えなければならない情報は膨大です。

NotebookLMに社内規定、研修マニュアル、過去の事例集、FAQなどをソースとして取り込めば、新人職員は必要な情報をいつでも、どこでも参照できます。例えば、「〇〇の利用者さんにはどのような対応が適切ですか?」「緊急時の対応フローについて教えてください」といった疑問に対して、NotebookLMは即座に的確な情報を提示します。これにより、新人職員のオンボーディング期間を短縮し、質問対応にかかるベテラン職員の負担を軽減できます。

さらに、ベテラン職員が長年培ってきた知識やノウハウを形式知化し、NotebookLMのソースとして共有することで、組織全体の知識レベル向上と属人化の解消に繋がります。これにより、質の高い職員育成が実現し、結果的に提供するサービスの質向上にも寄与します。

3.3. 日々の業務報告・記録の効率化と品質向上

日々のサービス提供記録や業務日報、会議議事録など、福祉現場では記録業務が欠かせません。これらの記録は、利用者の状況把握やサービス改善、監査対応など、多岐にわたる目的で利用されます。

NotebookLMを活用すれば、これらのドキュメントから重要なポイントを自動で抽出・要約することが可能です。例えば、長文の日報から「特記事項」や「要経過観察事項」を瞬時にピックアップしたり、会議の議事録から決定事項やToDoリストを自動生成したりできます。これにより、記録作成にかかる時間を大幅に短縮し、職員がより利用者の支援に集中できる時間を確保できます。

また、NotebookLMは表現の統一化にも貢献します。頻繁に使用される専門用語や表現を統一することで、記録の品質が向上し、情報共有の精度が高まります。監査対応時にも、必要な情報を迅速に抽出・提示できるため、業務の透明性と効率性が高まります。

3.4. サービス開発と改善への応用

福祉サービスは、利用者のニーズや社会情勢に合わせて常に進化していく必要があります。NotebookLMは、既存のサービス改善や新たなサービス開発にも役立ちます。

例えば、利用者からのフィードバックやアンケート結果、苦情内容などをNotebookLMのソースとして取り込み、AIに分析させることで、潜在的なニーズや改善点を発見できます。また、類似事例の横断的な比較検討を行うことで、より効果的な支援プログラムの開発に繋がる示唆を得られます。

さらに、法改正や制度変更に関する情報をNotebookLMに取り込むことで、それらが事業運営に与える影響を迅速に分析し、適切な対応策を検討する手助けにもなります。

4. NotebookLM導入のメリット:福祉事業にもたらす変革

NotebookLMの導入は、福祉事業に以下のような多岐にわたるメリットをもたらし、事業運営のあり方を根本から変革する可能性を秘めています。

  • 業務効率化と職員の負担軽減

    情報検索やドキュメント作成にかかる時間が大幅に削減されることで、職員は定型業務から解放され、より付加価値の高い業務、すなわち利用者の直接支援に集中できる時間が増加します。これは、職員の満足度向上にも繋がり、離職率の低下にも寄与する可能性があります。

  • 支援の質の向上と個別最適化

    根拠に基づいた迅速な情報アクセスは、より的確な支援計画の立案と実行を可能にします。職員間での情報共有が円滑になることで、支援の一貫性が保たれ、利用者一人ひとりの状況に合わせた、きめ細やかな個別支援が実現します。

  • 情報ガバナンスとセキュリティの強化

    Google Workspaceの強固なセキュリティ基盤の上に構築されているNotebookLMは、利用者様の機密性の高い個人情報を安全に管理できます。情報の一元管理により、紙媒体や個人PCでの管理による紛失・漏洩リスクが低減し、アクセス権限の適切な設定により、必要な情報が必要な職員にのみ共有される体制を構築できます。

  • データに基づいた経営判断の支援

    日々の業務記録や利用者アンケート、支援効果のデータなどをNotebookLMで分析することで、事業運営の現状が可視化されます。これにより、どのサービスに需要があるのか、どのような課題を抱えているのかをデータに基づいて把握し、サービスの改善や新たな事業展開に向けた根拠のある経営判断が可能になります。

5. NotebookLM導入にあたって考慮すべきポイント

NotebookLMの導入を成功させるためには、以下のポイントを考慮し、計画的に進めることが重要です。

5.1. 現状の業務フローの棚卸しと課題特定

まず、現在の情報管理方法や業務フローを詳細に把握し、どのような情報が散逸しているのか、どの業務に最も時間がかかっているのかを明確にしましょう。NotebookLMで解決したい具体的な目標(例:個別支援計画作成時間を20%削減する、新人職員への情報伝達時間を半減させるなど)を設定することで、導入効果をより明確に測定できます。

5.2. 情報の整理とデータ入力のルール化

NotebookLMは、取り込んだソースの品質に依存します。そのため、利用開始前に既存のドキュメントを整理し、フォーマットの統一や誤情報の修正を行うことが重要です。また、NotebookLMに情報を追加していく際のルール(例:ファイルの命名規則、タグ付けの方法など)を明確にし、職員全員で共有することで、将来的な検索性や活用の幅を広げることができます。必要であれば、過去のデータ移行計画も検討しましょう。

5.3. 職員への教育と定着化の推進

新しいツールの導入には、職員の協力が不可欠です。NotebookLMの操作方法に関する丁寧な研修を実施し、具体的な活用事例や成功体験を共有することで、職員の抵抗感を減らし、積極的に利用を促すことができます。管理者やリーダーが率先して利用し、その有効性を示す「トップダウンでの導入推進」も、定着化には非常に効果的です。

5.4. Google Workspace環境との連携の最適化

NotebookLMはGoogle Workspaceとの連携を前提としています。既存のGoogle Driveの活用状況を確認し、必要に応じてGoogle Workspaceの適切なプランへの見直しや、ドライブ内のフォルダ構成の最適化なども検討することで、NotebookLMのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。

6. まとめ:未来の福祉現場を創造するNotebookLM

Google WorkspaceのNotebookLMは、福祉事業における情報管理の課題を解決し、業務効率化、職員育成、そして利用者支援の質向上に大きく貢献する可能性を秘めたツールです。膨大なドキュメントの中から必要な情報を瞬時に引き出し、新たな洞察を生み出すAIの力は、日々の業務に追われる福祉現場に、新たな時間と価値をもたらします。

DXの波は、福祉業界にも確実に押し寄せています。NotebookLMの導入は、単なるツールの導入に終わらず、持続可能な福祉サービスを提供するための変革の一歩となり得ます。ぜひこの機会に、NotebookLMが貴社の福祉事業にもたらす未来についてご検討いただければ幸いです。