急速に進むテレワーク化やハイブリッドワーク環境の定着に伴い、Microsoft 365（旧Office 365）の定期更新はもはや運用の必須事項です。更新プログラムを適切に適用することで最新機能を享受できるだけでなく、セキュリティリスクの軽減にもつながります。しかし「更新チャネルの違いがわからない」「更新後に動作トラブルが起きた」など、多くの担当者が悩むポイントも多いのが実情です。
本記事では、更新手順から注意点、管理方法、よくある疑問までを徹底解説。導入済みの企業様はもちろん、これからMicrosoft 365を本格利用する組織にも必携の一冊です。

1. なぜ「更新」が重要なのか？

従来のパッケージ版Officeでは、新バージョンが出るたびに追加費用が必要でした。一方、Microsoft 365はサブスクリプション型のため、契約期間中は無償で最新バージョンを使えます。
更新の主なメリットは次の3つです。

• 【セキュリティ強化】脆弱性の修正により情報漏えいリスクを低減
• 【新機能の利用】AI支援機能や共同編集機能を最速で体験
• 【パフォーマンス改善】バグ修正や細かなUX向上で快適さを維持

更新を怠るとサポート切れや既知の脆弱性を放置することになり、攻撃リスクが高まります。組織管理者は必ず「更新ポリシー」を策定し、自動または手動での適用フローを確立しましょう。

2. 更新チャネルの種類と特徴

Microsoft 365 Apps の更新チャネルとは、更新プログラムを受け取るタイミングや頻度を制御する方式です。組織のリスク許容度や運用体制に合わせて使い分けることで、安定性と最新性を両立できます。

図1: 更新チャネル比較表

チャネル	提供タイミング	メリット	注意点
最新チャネル	最速リリース（随時）	新機能を即時利用可能	動作検証不足のまま適用されるリスク
月次エンタープライズ	毎月第2火曜	頻度と安定性のバランス良好	運用負荷が定期的に発生
半期エンタープライズ	年2回（1月・7月第2火曜）	大規模テスト後、安定性最高	最新機能の導入が遅れる

3. Windows／Mac別 更新手順

3.1 Windows端末の手動更新

1. Officeアプリを起動し、「ファイル」→「アカウント」を開く
2. 「更新オプション」ボタンをクリックし、「今すぐ更新」を選択
3. 完了後、アプリを再起動してバージョンを確認

※Microsoft Store版はStoreから、Click-to-Run版は管理センターのポリシーで制御します。

3.2 Mac端末の更新方法

• AutoUpdate：アプリ「ヘルプ」→「更新プログラムのチェック」→「自動更新を有効化」
• App Store版：App Storeを開き、「アップデート」タブからOfficeアプリを更新

4. 更新プログラムの種類と適用優先度

更新プログラムには、セキュリティ、クオリティ、機能の三種類があります。全社運用では、セキュリティ更新を最優先とし、機能更新は十分な検証後に適用するフローが安心です。

図2: 更新プログラムのタイプ

種類	内容	優先度
セキュリティ更新	脆弱性修正パッチ	高（即時適用推奨）
クオリティ更新	バグ修正・パフォーマンス改善	中（週次検証後）
機能更新	新機能追加・UI改善	低（十分検証後）

5. 更新手順の詳細ガイド

Microsoft 365の更新は「ただクリックして終わり」ではありません。組織全体の安定稼働を確保しながら、新機能とセキュリティを取り込むため、以下のステップで細やかに運用しましょう。

5.1 更新チャネルと環境の確認

まずは更新チャネルを決定し、管理センターまたはグループポリシー/Intuneで適用グループを設定。同時にステージング環境（テストPCや仮想マシン）を本番と同じ設定で用意します。

5.2 ステージング環境での検証

1) テストPCに更新を適用し、Officeアプリ起動後のバージョンを確認
2) 社内マクロ、カスタムテンプレート、PowerShellスクリプトを動作テスト
3) Teams会議・SharePointアクセスで表示崩れや権限問題がないかチェック
検証結果はログにまとめ、問題があればMicrosoftサポートやLANSCOPEに相談して対策します。

5.3 本番環境への段階的展開

ステージングで問題がなければ以下のフェーズで展開します。

• フェーズ1：キーユーザー（10～20名）に適用
• フェーズ2：管理部門・開発部門へ展開
• フェーズ3：全社一斉適用

各フェーズ前後に社内ポータルやメールで通知し、「今すぐ更新」を促す案内を出しましょう。

5.4 ロールバック手順

万が一トラブルが発生した場合、以下で更新前の状態に戻せます。

1. 管理者特権でPowerShellを開き、Rollback-Microsoft365Update（環境により異なる）を実行
2. Officeクライアントを再起動し、更新前ビルドへ復帰
3. ステージング環境で原因分析し、修正プランを策定

ロールバックログは運用ファイルに残し、再発防止策を講じましょう。

5.5 定期運用スケジュールの策定

更新作業を確実に実施するため、年間スケジュールを前もって設定します。

• 毎月第2火曜：月次エンタープライズチャネル検証・展開
• 半期（1月・7月第2火曜）：半期チャネル大規模テスト
• 緊急セキュリティ更新：パッチ公開後24時間以内にステージング適用

各タスクに担当者と期限を設定。LANSCOPEのダッシュボードで進捗を可視化し、漏れを防止します。

図4: 更新実施チェックリスト

作業項目	詳細内容	担当	完了
チャネル設定確認	管理センター／GPO設定再確認	IT管理者	◯／✕
ステージング適用	テスト端末で動作検証	検証担当者	◯／✕
影響範囲調査	マクロ・スクリプト動作確認	開発部	◯／✕
本番ロールアウト	段階的展開・ユーザー通知	IT運用チーム	◯／✕
運用レポート	ログ・インシデント集計	運用管理者	◯／✕

6. 更新運用フローのベストプラクティス

更新作業を担当部門と分担し、以下のフローを確立すると効率的です。

ステージング検証 → 影響範囲確認 → 本番ロールアウト → トラブル対応 → レポート作成
各段階でチェックリストを使い、完了報告と課題共有を徹底しましょう。

7. 更新管理で見落としがちなポイント

• 非アクティブユーザー：更新対象外の端末に残る古いライセンス
• 帯域制御：大規模更新時のネットワーク負荷をGPで制限
• 自動更新オフ環境：サーバーなど手動更新忘れ
• ログ収集：管理センターやAzure Monitorで可視化

8. 更新失敗時のトラブルシューティング

• ネットワーク切断：再試行またはオフラインインストーラ使用
• ディスク不足：不要ファイル削除後再適用
• ポリシー競合：GPO/Intune設定の優先順位見直し
• マクロ互換性：VBAコード修正またはレガシーサポートモード

9. Lanscopeで叶える統合更新管理

LANSCOPE セキュリティオーディターを使えば、更新状況の可視化、設定ミスや更新漏れの自動検知が可能。ダッシュボードで運用状況を一元管理し、更新作業の属人化を防ぎます。

10. よくある質問（FAQ）

Q1. どの更新チャネルを選べばいい？

A1. 安定性を重視するなら半期エンタープライズ、機能優先なら最新チャネル、バランスなら月次エンタープライズがおすすめです。

Q2. 更新後に業務アプリが動かなくなったら？

A2. ステージング検証を徹底し、問題発生時はロールバック手順で即時復旧、原因分析を行いましょう。

Q3. Mac版の更新は？

A3. AutoUpdateまたはApp Store版からの更新が可能ですが、Store版は更新タイミングがStoreに依存します。

11. まとめ

「office365 更新」は、最新機能とセキュリティを両立する要です。本記事では、更新チャネルの選定（図1）、プログラム種類（図2）、詳細手順（図4）、運用フロー（Section 6）、トラブル対策、LANSCOPE連携まで網羅しました。
まずは月次エンタープライズチャネルでステージング検証を開始し、段階的に全社適用しましょう。定期的なレビューとログ分析を組み合わせ、安全かつ快適なMicrosoft 365運用を実現してください。