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COLUMお役立ちコラム

2025年5月15日

法人向けOffice 365導入完全ガイド:プラン選定から運用まで

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進行する中、オフィス業務のクラウド化はもはや必須です。Microsoft 365(旧Office 365)は、文書作成や表計算、プレゼンテーションといった基本的なOfficeアプリケーションに加えて、Teamsによるオンライン会議、OneDriveによるファイル共有、SharePointによる社内ポータル、さらには高度なセキュリティ機能やモバイルデバイス管理まで一元的に提供する強力なプラットフォームです。
しかし法人向けプランにはBusiness系からEnterprise系まで多彩なラインナップがあり、各プランの機能や料金、ライセンス形態が大きく異なります。「自社にはどのプランが最適か?」と迷うIT管理者や経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では法人向けプランの全体像や特徴、コストシミュレーション、導入ステップ、運用上のポイントを網羅的に解説します。

1. 法人向けプランの全体像

法人向けMicrosoft 365は大きく「Business系」と「Enterprise系」の二つに分かれます。
Business系は中小規模組織向けに機能を絞り込みつつ、価格を抑えたプランを提供。オンライン共同作業やメール、クラウドストレージを重視する企業に最適です。
Enterprise系はユーザー数無制限で提供され、セキュリティやコンプライアンス機能を強化。大規模組織や規制業界に求められる高度な情報保護と統制を実現します。

図1: 法人向けプラン概要

系列 プラン名 主な機能 月額/ユーザー
Business系 Business Basic Web版Office、Teams、OneDrive(1TB) 540円
Business Standard Basic+デスクトップ版Office 1,360円
Business Premium Standard+Intune、Defender for Office 365 2,180円
Enterprise系 Office 365 E3 Standard機能+コンプライアンス管理、Azure AD Premium P1 2,340円
Office 365 E5 E3+Advanced Threat Protection、電話会議、Power BI Pro 3,830円
Microsoft 365 E3/E5 E3/E5+Windowsライセンス、EMS、Endpoint Manager 4,840円/7,100円

2. Business系プラン詳細と選び方

Business系プランは300ユーザーまで契約可能で、中小企業や部門単位の展開に最適です。プラン選定のポイントは「必要なOfficeアプリ」「クラウド機能」「セキュリティ要件」の三点です。

2.1 Business Basic

  • 主な用途:Webブラウザやモバイルアプリでの文書編集、メール、Teams会議に特化
  • メリット:最安プランでありながらメールホスティングと1TBのクラウドストレージを提供
  • 制限:デスクトップ版Officeが含まれず、オフライン環境での使用に不便

2.2 Business Standard

  • 主な用途:デスクトップ版Officeアプリをフル活用したい場合
  • メリット:Word、Excel、PowerPointのデスクトップインストール版を利用可能
  • おすすめ:資料作成や編集が頻繁な営業部門、経理部門など

2.3 Business Premium

  • 主な用途:中小規模でも高度なセキュリティとデバイス管理が必要な場合
  • 機能:Intuneによるモバイル管理、Defender for Office 365でのメール脅威保護
  • メリット:追加ライセンス不要でセキュリティと管理機能を強化

Business系は「Office利用頻度」「端末管理の必要性」「予算上限」を基準に選定すると良いでしょう。

3. Enterprise系プラン詳細と選び方

Enterprise系プランはユーザー数に制限がなく、大規模組織や高度なコンプライアンス対応が必要な業務に向いています。E3、E5、Microsoft 365 E3/E5の四つの中から要件に合わせて選びましょう。

3.1 Office 365 E3

  • 標準的なOfficeアプリ、Exchange、Teams、OneDrive、SharePointを提供
  • Azure AD Premium P1によるシングルサインオン、条件付きアクセス
  • データ損失防止(DLP)や情報保護ラベルを利用可能

3.2 Office 365 E5

  • E3のすべてに加え、Microsoft Defender for Office 365プラン2、Advanced Threat Intelligence、電話システム機能
  • Power BI Proを含み、データ分析とレポートが簡単に
  • ハイブリッド通話機能やPSTN通話プランと連携し、電話網と統合

3.3 Microsoft 365 E3/E5

  • Office 365 E3/E5にWindows 10/11のライセンスを含むフルバンドル
  • Endpoint Manager(Intune + Configuration Manager)によるデバイス統合管理
  • Zero Trustセキュリティポリシーの実装を包括的にサポート

Enterprise系は「ユーザー数」「セキュリティポリシー」「電話・通話機能」「ビジネスインテリジェンス要件」を勘案し選定しましょう。

4. コスト比較とTCOシミュレーション

プラン選定の際は、初期コストだけでなく5年程度の運用コスト(TCO)を比較検討することが重要です。以下は100ユーザー想定の概算です。

図2: 5年間TCO比較(100ユーザー)

Business Standard: 1,360円×12ヶ月×5年=8,160,000円
Office 365 E3: 2,340円×12ヶ月×5年=14,040,000円
Microsoft 365 E3: 4,840円×12ヶ月×5年=29,040,000円

※相対比較。グラフ幅はBusiness Standardを100%として算出。

5. 導入ステップと注意点

法人向け導入は以下のステップで進めると成功率が上がります。特に最初の要件定義で現行システムの棚卸しとビジネス要件を明確化しましょう。

図3: 導入ステップフロー

  1. 要件定義:利用部門ヒアリング、既存環境の調査、KPI設定
  2. PoC導入:20~30ユーザー規模で検証環境を構築、課題抽出
  3. 本番展開:通信環境調整、社内展開ガイド策定、権限設定
  4. トレーニング:管理者・エンドユーザー向け研修、マニュアル配布
  5. 運用・効果検証:利用率レポート、ユーザー満足度調査、コスト効果測定

6. セキュリティ・コンプライアンス強化

Enterprise系ではAzure AD Premium、Intune、Defender for Office 365を組み合わせることで、ゼロトラストモデルを実現。
– 多要素認証で社外アクセスを制限
– 条件付きアクセスでリスクを自動検知
– DLPや情報保護ラベリングで機密データを守る
特に金融機関や医療機関など厳格な規制業界では、E5プランを採用してSIEM連携やメール高度脅威防御を導入するケースが増えています。

7. ライセンス管理でコスト最適化

全社一律プランでは無駄が生じることも。
– 部門ごとに最適プランを割当てる
– 利用実態をモニタリングし低利用者はダウングレード
– ボリュームライセンスで一括割引を活用
といったハイブリッド運用でTCO削減を図りましょう。

8. 導入事例:中堅SIer企業A社の成功例

従業員200名のSIer A社はテレワーク強化のためBusiness Premiumを採用。
– VPN負荷50%削減
– 紛失端末のリモートワイプで情報漏洩ゼロ
– 導入半年で年間500万円運用コスト削減
といった効果を実現しました。セキュリティ強化とコスト管理を両立した事例です。

9. よくある質問(FAQ)

Q1: Business系とEnterprise系の違いは?
A1: Business系は300ユーザー以下向けの基本機能提供、Enterprise系は無制限ユーザーと高度なセキュリティ・コンプライアンス機能を提供。
Q2: プラン変更は途中で可能?
A2: 契約期間中のプランアップグレードは可能ですが、割引条件や支払形態に注意が必要です。
Q3: 大量購入割引はある?
A3: ボリュームライセンスプログラムに参加すると大幅割引が適用されるケースがあります。販売代理店に確認しましょう。

10. まとめ:最適プランの選び方

法人向けOffice 365の導入成功には、自社の利用目的、ユーザー数、セキュリティ要件、予算を総合的に勘案し、Business系かEnterprise系か、さらにその中のどのプランが最適かを選定することが不可欠です。まずは小規模なPoCからスタートし、段階的に全社展開を進めてください。
適切なプラン選定と運用体制の構築により、業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化、そして柔軟な働き方の実現が同時に達成できるでしょう。