最近話題のPL脳は企業を蝕んでいるのか?

執筆者
中川豊章
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PL脳とは何か?

最近書籍等で良く出ている「PL脳」というキーワードがあります。PLとは会計分野では損益計算書の事を指しており、BS(貸借対照表)とセットで語られることが多いです。

PL脳とは一言で言えば「単年で売上と利益を上げることに固執した古い考え方」という事になります。もしかすると、古いというと語弊があるかもしれません。昭和の時代、経済成長著しい日本経済は国内経済が人口増と技術革新で急成長していました。この時に日本人に深く刻み込まれたのがPL脳です。積極的な投資をしなくても、市場が成長している恩恵を企業は受けることが出来た為、投資よりも会社の評価を分かりやすく示すPLに注目したといったところでしょうか。ですので、古い考えというより経済の調子が良い時の考えだったのでしょう。

何故PL脳はダメなのか?

前述した通り、今の日本経済は好調とはいいがたく、何もしなければ下りエスカレーターに乗っているとも揶揄されます。人口減少で需要が減る中小企業の顧客や売上は徐々に低下していきます。そんな中でも「増収増益を!」と声高らかに叫んでいるとどうなるでしょうか?「広報宣伝費を削る」「社員の給料を下げる」「マーケティング予算を削る」「設備投資を怠る」等など、本来成長戦略で必要なものにまでメスを入れて、積極的な投資が出来なくなるという事を招きます。

東京では、ベンチャーキャピタルやファンドが出資をして数年間赤字のベンチャーを支援することが当たり前の世の中になって、赤字にも意味があることは広く知られるようになってきました。しかし、地方企業に目を向けてみると増収増益に固執して、「赤字は悪だ!」という企業も珍しくありません。市場が落ち込んでいる時に、かなり無理があることを理解いただけますでしょうか?

成長する為には投資が必要です。「リスクのない所にビジネスはない」とよく言いますが、今の日本の市場が普通で、昭和がおかしかったのです。この停滞している社会の中でPL脳を捨てて、未来の利益をとりにいける経営者が地方でどれだけ出てくるのか楽しみです。

PL脳とは赤字を推奨しているわけではない

とはいっても、会社経営では資金繰りの話も無視はできない為、赤字ばかり出すわけにいかないという現状があります。様々な書籍に書かれているPL脳はあくまでも単年度の利益に踊らされず、中長期的な投資感覚と成長戦略を前提に考えることを推奨するというものです。銀行からの借り入れや返済計画など、外部要因も大きく影響してきます。考えなければならないのは、「短期的な利益を獲得するために、必要な投資を削ることは悪」という強い信念をもって置く事だけなのかもしれません。