静岡県内企業の後継者問題の実態

執筆者
伊東貴弘
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静岡県内企業における後継者不在問題の深刻化

近年、静岡県内企業における後継者不在問題が深刻化しています。
2017年の株式会社帝国データバンクの調査によると、2015年以降(2015年10月~2017年10月)で、県内企業全体の後継者不在率は59.1%となっており、実に県内企業の6割が後継者不在となっています。特に、県内企業の売上規模「1 億円未満」の小規模企業では、後継者不在率が72.2%となっており、後継者不在企業が小規模企業全体で7割を占めています。

また、県内企業の社長の年齢別での後継者不在率は60歳代で43.2%、70歳代で32.7%、80歳以上で28.0%と、事業承継を考える60 歳以上の高齢社長の後継者不在率が非常に高い値となっています。後継者不在が進むと、経営の存続や企業成長の弊害となって、やがては廃業に繋がり、廃業による資産処分や従業員解雇を余儀なくされる状況が深刻化することも懸念されます。

これまで事業を継続してきた企業が、市場が存在し、社会的なニーズや企業として成長の余地があるにもかかわらず、後継者不在による廃業という選択をする企業の増加は社会的な損失となるように思います。

後継者不在の理由

このように、静岡県内の後継者不在率としては、資金力の少ない小規模企業が多く、経営の交代を考える年代でも後継者が見つからずに経営者の高齢化が進んでいるという状況にあります。

資金力の少ない小規模企業が事業承継を円滑に進めることができない要因は多義に渡りますが、大きく分けると「人」「物(技術)」「金」の3つにあるように感じます。

例えば、「人」ですと、県内の若者(後継者候補)の首都圏流出が顕著であり、小規模企業に多い承継スタイルである親族内承継が難しい現状にあります。

また、「物(技術)」に関しては、技術力など、自身の会社の価値や魅力を理解しておらず、承継先候補へその魅力の伝え方が分からないことを理由に承継を諦めている小規模企業(承継元)もいます。

そして、「金」に関しては、事業承継支援機関(コンサルティング会社等)へ支払う費用(着手料や成功報酬等)が高いということや、「人」の部分にも重なりますが、どの業種も人手不足で人件費が賄えず、後継者の確保や育成ができないなどの理由もあります。

 

今後の県内事業承継の展望

上記のように、後継者候補の首都圏流出や少子化、承継にかかる費用不足という「人」や「金」による要因で、今後、静岡県では親族内承継より第三者承継が小規模企業の承継スタイルとして更に増加していくのではないかと予想しています。

そのため、事業を売りたいと考えている企業の「物(技術)」の魅力をWEBでプロモーションを行ったり、買いたいと考えている企業と話し合いの場を設置してファシリテーションしたり、その企業の売却時の価値向上に努め、買いたいと考えている企業のニーズにコミットしていく民間での承継支援サービスが県内でも増えるのではと思います。

出典元:帝国データバンク 『後継者問題に関する静岡県内企業の実態調査』