遠隔点呼とは?運行管理時の点呼を遠隔地でも実現するために

遠隔点呼は、自動車運送事業者による遠隔地間での点呼を実現する制度です。過労運転の防止や安全確保を目的として、国土交通省によって導入されました。このページでは、遠隔点呼の概要についてお伝えします。

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遠隔点呼とは

遠隔点呼は、自動車運送事業者(バス・タクシー・ハイヤー・トラックなど)によって遠隔地の拠点間で行われる点呼の方法です。点呼は事故防止を目的として、国土交通省が定める法令である貨物自動車運送事業輸送安全規則および旅客自動車運送事業運輸規則によって義務付けられています。

従来の点呼と運行管理者の役割

通常、安全確保のために運行管理者が営業所に配置され、乗務前後に対面点呼が行われます。しかし、2022年4月からは「遠隔点呼実施要領」に準拠した機器・システムを使用することで、遠隔地での点呼が可能になりました。

なお、似たような内容にIT点呼がありますが意味が異なります。以下のページではIT点呼と遠隔点呼の違いも紹介しているのでご覧ください。

IT点呼と遠隔点呼の違いを比較

遠隔点呼実施要領とは

「遠隔点呼実施要領」は、対面点呼と同等の確実性を確保するために必要な要件が示されています。この要領は、国土交通省自動車局安全政策課長名によって2021年12月に発行されたもので、運行管理の高度化を検討する有識者からなる産官学の会議によってまとめられました。

「遠隔点呼実施要領」には以下のようなルールが定められています。

  • 実施方法の機器・システム要件
  • 施設・環境要件
  • 運用上の遵守事項

これらの要領に基づいて、遠隔点呼が実施されることで、運行管理の効率化と安全性の向上が期待されています。

遠隔点呼が適用できる企業・営業所

遠隔点呼の実施環境についてお伝えします。基本的には営業所間、一部にはグループ企業との間で遠隔点呼が行われるケースも見受けられます。遠隔点呼制度は、営業所間では比較的容易に導入できるメリットがありますが、他のケースではどうでしょうか。

営業所と車庫間の導入

営業所と車庫の間で遠隔点呼を実施する場合、休憩睡眠施設や点呼場が併設されている車庫ならば、比較的容易に導入できるでしょう。

照度の確保

カメラやモニターを通じて、遠隔点呼を実施する営業所の運行管理者が、遠隔点呼対象となる車庫の運転者の顔の表情、全身、酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足などの状況を明瞭に確認できる環境照度が確保されていることが求められます。なお、運転者の顔とカメラの間の照度は500ルクス程度が望ましいとされています。

監視カメラの設置

遠隔点呼対象となる車庫の点呼場所の天井などに監視カメラが設置されており、遠隔点呼を実施する営業所の運行管理者が必要に応じて映像を確認できる状況が整っていることが要件とされています。これにより、運転者の全身やアルコール検知器の使用状況を確認することが可能です。

通信環境の確保

必要な通信環境を整備していることが求められます。遠隔点呼を行うためには、運行管理者と遠隔地の運転者との間で円滑な通信が行えることが重要です。通常、テレビ電話やネットワーク機器を使用します。

グループ企業の定義

遠隔点呼制度では、以下のいずれかの関係に該当する企業をグループ企業とみなします。

100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社間の関係
100%子会社同士の関係
つまり、親会社が子会社を100%の株式保有によって支配している場合や、子会社同士がお互いに100%の株式を保有している場合は、遠隔点呼制度の対象となります。

ただし、上記のいずれにも該当しない資本関係や関連会社の場合、遠隔点呼制度は実施することはできません。

これらの定義に基づいて、遠隔点呼制度の対象企業を明確にすることが重要です。

まとめ

遠隔点呼は自動車運送事業者の遠隔地間での点呼制度です。過労運転防止を目的に、国交省の法令に基づき義務付けられています。運行管理者が運転者の状況をカメラやモニターで確認するため適切な通信環境も必要ですが、言い換えれば、条件さえ整えば遠隔地から点呼できるようになりました。

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