従業員数の少ない小規模企業では、従業員の勤怠を手作業で管理していることが珍しくありません。しかし、手作業での管理をいつまでも続けていると、思わぬトラブルに発展することもあるのです。
勤怠管理システムの中には、小規模事業者向けのものや、コストを抑えて使えるものもあります。中小企業が勤怠管理システムを導入するメリットや注意点、おすすめのシステム5選などをまとめて紹介します。
小規模企業における勤怠管理システムの重要性
小規模企業にとっても、勤怠管理システムは大いに役立ちます。
「小規模だから紙での管理で事足りている」「正確性を高めるためにタイムカードは導入しているが、集計は人の手で行えばいい」といった考え方では、将来問題が起こるかもしれません。
アナログな集計方法には、計算ミスや悪意による情報改ざんリスクがあります。また「タイムカードの集計や入れ替えのタイミングで一、人しかいない事務員が休んでしまって誰も対応できない」といったことも起こりかねません。引継ぎにも時間と手間がかかります。
小規模事業者も、勤怠管理システムによる業務の自動化や効率化を検討しましょう。
小規模・零細企業における勤怠管理の課題
勤怠管理に関する課題を抱えている中小事業者は少なくありません。規模がそれほど大きくないからこそ、これまで「なんとなく」で続けてきてしまった習慣があるという企業も多いでしょう。
小規模企業にありがちな勤怠管理に関する課題を3点紹介します。
法改正・法令遵守への対応
2019年4月1日から、労働安全衛生法によって「すべての労働者の労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握する」ことが義務付けられました。
これは企業に対する義務ですから、必ず実行しなければいけません。しかし、手書きの勤怠表をスタッフが目視で確認して集計するといったアナログな方法では、正確な労働時間の把握は困難です。
小規模な事業者であっても、改ざんができない機械的な記録と集計を行うのが望ましいでしょう。
業務の手間・計算ミス
たとえ管理する人数が少なくても、従業員一人ひとりの出勤時間と退勤時間から、勤務時間や残業時間などを手計算するのは手間がかかります。
エクセルなどに転記して自動計算できるようにしておいたとしても、入力作業が必要ですし、式が壊れてしまったといった理由で計算ミスが起こることもあるでしょう。
アナログの勤怠管理は、手間と時間がかかる割に正確性が低く、生産性に欠ける方法なのです。
勤怠管理業務の属人化
勤怠管理業務を行える従業員が1人しかいない場合、該当の従業員の急病や退職によってただちに業務が滞るリスクがあります。
小規模事業者では、勤怠管理業務を事務員がひとりで行っていたり、社長が自ら行っていたりすることが多いでしょう。しかし、このような状態はあまり望ましくありません。
業務の属人化を防ぎ、通常の担当者以外の従業員でも対応できるようにしておくことが大切です。「勤怠集計が遅れて給与が期日に支給できない」といったことがないようにしましょう。
勤怠管理システム導入による小規模・零細企業へのメリット
小規模事業者にとって、勤怠管理システムの導入には多くのメリットがあります。将来にわたって、継続的に得られる3つのメリットを紹介します。
業務効率化・負担軽減
これまで目視や手作業で管理、集計していた勤怠をシステム的に処理することで、業務の効率化ができます。
勤怠管理システムを導入すれば、給与支給に間に合うように慌てて勤怠データの取りまとめや計算を行う必要はなくなります。自動で計算されたデータを元に給与計算業務を行えますから、無理なく対応できるでしょう。確実な勤怠データをスピーディに把握することで、業務負担が軽減されます。
経費削減
勤怠管理システムの導入は、広い視点で見れば経費削減にもつながります。
新しいシステムの導入には費用がかかる場合が多いことから、「便利だけどコストがかかる」と思っている方もいるかもしれません。しかし、勤怠管理システムを導入することで、それまで手作業で勤怠計算をするのに費やしていた時間分の人件費や、手書きの出勤簿の管理費用などがなくなります。タイムカードを使わないシステムを利用するのであれば、タイムカードの購入費用も必要ありません。
様々な状況に対応可能
勤怠管理システムでは、法改正に応じたアップデートが自動的に行われるのが一般的です。
従業員の勤怠管理や労働時間に関する法律は、随時改正されています。今後も、企業側に新たな対応を求める改正が行われる可能性は十分あるでしょう。
このような時も、状況に応じてアップデートされる勤怠管理システムを利用していれば安心です。担当者が改正内容を調べて、対応するための方法を検討する必要はありません。システム側から案内を受け取れますし、法改正に対応したシステムに自動で変更されます。
小規模・零細企業の勤怠管理システム選定ポイント
勤怠管理システムは、一度導入した後で乗り換えようとすると手間がかかります。後悔がないよう慎重に選びましょう。
小規模事業者が勤怠管理システムを選ぶときの4つのポイントを紹介します。
Point1.自社の規模・ルールに適性か
勤怠管理システムの特徴や自社の規模や勤怠管理の運用方法に適しているかは、もっとも基本的なチェックポイントです。
従業員数が数名程度の小規模事業者が、多くの支店を持つ大企業向けのシステムを導入するメリットはありません。コストがその分高額になったり、不要な機能が多数搭載されていたりする可能性があるでしょう。
また、フレックスタイム制や裁量労働制を採用している企業では、多様な働き方に対応できる勤怠管理システムを選ぶ必要があります。
対応している従業員数や機能が自社に合っているかどうか、チェックしてみましょう。
Point2.必要なサポート体制が整っているか
勤怠管理システムのサポート体制は、それぞれ異なります。導入支援の有無や、操作方法がわからない場合のフォロー、解説動画等の有無、法改正などの関連情報の提供など、必要なサービスがそろったシステムを選びましょう。
たとえば、デジタルに詳しい従業員の少ない企業で導入を検討するのであれば、導入後も手厚いフォローを受けられるシステムが良いでしょう。電話サポートの有無など、トラブル発生時の対応方法についてもチェックしておくと安心です。
Point3.費用対効果が見合うか
勤怠管理システムの導入にあたって、コストは必ず考えなければならないポイントです。コストと機能が見合うかどうか、確認しましょう。
おおよその予算上限を決めて、予算の範囲内で必要な機能をカバーできるシステムを探すのがおすすめです。
予算を上げればより機能の充実したシステムを導入できるかもしれませんが、無理に高額な契約をしたせいで利用を継続できなくなっては意味がありません。反対に、コストを下げようとするあまり、必要な機能が搭載されていないようでは、システム導入が無駄に終わってしまいます。
Point4.長期間の使用が期待できるか
長期的に利用できるかどうかも、選定のポイントです。
将来企業の規模が大きくなった場合に対応できるかどうか、途中で就業規則が変わった場合に変更に対応できるかなど、将来起こり得る事態を想定して機能をチェックしましょう。
また、メンテナンスがこまめに行われているかどうかも確認しておく必要があります。開発がストップしてしまっているシステムでは、最低限のアップデートしか行われずに将来使いにくくなってしまう可能性があるでしょう。
中小企業におすすめの勤怠管理システム5選
従業員がそれほど多くない、小規模な事業者におすすめの勤怠管理システム5選を紹介します。それぞれの特徴や料金システムなどをまとめましたので、システム選定の参考にしてください
①ジンジャー勤怠
ジンジャー勤怠は、出退勤時刻の管理や労働時間の集計、有給管理までを一括で行える勤怠管理システムです。
シフト管理機能や残業時間に関するアラート機能、予実管理などもついていて、労働時間がイレギュラーになりがちなシフト制の企業にも適しているでしょう。導入時のサポートも手厚く、システムに詳しくない事業主の方でも安心です。
従業員データベースは無料、それ以外のサービスの利用料は従業員1人あたり300円~です。
②Money Forward クラウド勤怠
Money Forward クラウド勤怠は、勤怠の記録と確認やカスタム集計、有給管理、アラート、複数の就業形態への対応、打刻ごとの丸め設定など、充実した機能が搭載された勤怠管理システムです。
基本料金は小規模事業者向けと中小企業向けでそれぞれ設定されていて、規模に応じた金額で利用できます。小規模事業者向けの基本料金は月額2,9880円(年額プラン)で、6名以上になると1人あたり300円の従量課金が発生します。
1ヵ月無料でお試しができるので、まずは動かしてみましょう。
③AKASHI
AKASHIは、初期費用0円から、1人あたり月額200円からのリーズナブルな価格設定が魅力の勤怠管理システムです。
ただし、月額200円で利用できるのは、シンプルな出退勤管理機能のみで、最低利用料金は2,000円です(10名以内で利用する場合も10名分の料金が発生)。
シンプルな機能だけで良いからリーズナブルに利用したいという方は、検討してみましょう。30日間の無料トライアルも可能です。
④KING OF TIME
多彩な打刻手段に対応した勤怠管理システムが、KING OF TIMEです。PC打刻や生体認証、ICカード、チャット打刻など、さまざまな方法の中から都合に合わせて利用できます。出社時はICカード、退勤時はスマホなど、異なる手段での打刻もできるので、外出が多い業種でも対応しやすいでしょう。
そのほか、シフト管理や残業管理、アラートといった各種機能もそろっています。さらに、初期費用なし、1人あたり300円とリーズナブルに利用できます。
⑤kincone
今回ご紹介する5つの勤怠管理システムの中でも、特にコストを抑えて導入できるのがkinconeです。1ユーザーあたり200円、5名からスタートできるので、費用負担が少ないでしょう。
打刻方法はICカードやアプリ、チャットなどです。GPSで打刻場所を表示させることができるので、不正防止にも役立ちます。労働時間の集計やアラート機能、有給管理など、小規模事業者が必要とすると予想される機能が一通りそろっています。
(まとめ)小規模企業においても勤怠管理システムは重要
たとえ小規模な企業でも、勤怠管理システムの導入はおすすめです。今はリーズナブルに利用できるシステムが数多く登場していますから、却ってコスト削減につながる可能性もあります。
多くの勤怠管理システムでは、1ヵ月程度の無料お試し期間を設けています。本格的に導入する前に、現在の勤怠管理方法と併用して、使いやすさや業務にかかる時間の違いなどを確認してみましょう。