勤怠管理システムは、自社で作成することもできます。「システムを導入するほどではない」と感じている小規模事業者の方は、自作を検討してみてはいかがでしょうか。

本記事では、勤怠管理システムを自作する方法や必要な項目、注意点などをまとめて紹介します。手作業の勤怠管理や出退勤時刻の集計に限界を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

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勤怠管理システムの自作は可能なのか

勤怠管理システムは、コストをかけて専用システムを導入しなくても、自社で作成できます

小規模な企業の事業主の中には「勤怠管理システムの導入は不要」と考えている方もいるかもしれません。しかし、手作業での管理には時間と手間がかかりますし、ミスの元にもなります。システム化するメリットは大きいため、コストを掛けたくない場合は社内で作成することを検討してみましょう。

なお、小規模な企業におすすめの勤怠管理システムについては、こちらで詳しく紹介しています。自作は難しそう、という方はこちらを参考にしてください。
勤怠管理システムは小規模な中小企業にも必要?その重要性と導入メリットとは

勤怠管理システムを自作する2つの方法

勤怠管理システムを作成する方法は、主にExcelまたはプログラミングの2種類です。

どちらにするかは、それぞれの企業に在籍している従業員のスキルや、勤怠管理システムに求める機能によって異なるでしょう。それぞれの特徴と、メリットとデメリットについて解説します。

Excel:関数やマクロ・テンプレートを活用する

Excelを使った勤怠管理システムであれば、それほどシステムに詳しくない方でも取り組みやすいでしょう。

「出勤時刻と退勤時刻、休憩時間を入力すると自動で労働時間と残業時間が表示される」といったシステムなら、比較的容易に作れます。より便利に使いたい場合は、マクロによる自動化も検討してみてください。

さらに、企業等のホームページで配布されているExcelの勤怠管理システムテンプレートをダウンロードする方法もあります。無料テンプレートが多数配布されていますから、活用しましょう。自社の業務内容に合ったテンプレートを見つけられれば、さらに簡単にExcelを使った勤怠管理をスタートできます。

Excelは多くの企業が利用しているソフトですから、初期費用がかからず、導入もスムーズです。一方で、改ざんリスクがある、ほかのシステムとの連携が取りづらい、複雑な管理を行うのは困難といったデメリットもあります。

プログラミング言語:HTML・PHP・Python・JavaScript等を用いる

プログラミング言語を使える従業員がいる場合は、勤怠管理システムを自社開発することが可能です。

プログラミング言語にはさまざまな種類がありますが「Python」「java」「javascript」「c#」「HTML」「Ruby」「PHP」などの言語を使える従業員がいるのであれば、システム開発を依頼してみても良いでしょう。Ruby on Railsを活用することもできます。

自社で開発を行えば、企業独自のルールややり方を踏襲したオリジナルのシステムを作ることが可能です。これは、既存のシステム利用では得られない大きなメリットです。一方で、従業員のスキルによってできることが異なる、該当の従業員が退職後にサポートできなくなる可能性がある、といったデメリットもあります。

自作でも必要な勤怠管理システム機能

勤怠管理システムを自作する場合は、必要な機能が漏れないように気を付けなければいけません。従来の勤怠管理をどのように行っていて、どんな機能が必要なのかあらかじめリストアップしておきましょう。

本項では、業種や規模を問わず搭載したい代表的な4つの機能を紹介します。

打刻機能

勤怠管理を行うためには、出退勤時間の正確な把握が必須です。

時間を書き込んだ出勤簿を転記するといった方法はミスが起こりやすく、業務効率化も進みません。「出勤」や「退勤」のボタンを押すと該当の時間が記録されるといった機能を搭載させましょう。
休憩時間や中抜けについても記録できるようにしておくと、正確な労働時間の把握をしやすくなります。

残業・休暇記録

残業時間の正確な把握や月ごとの集計、2ヵ月から6ヵ月の平均残業時間の算出、有給休暇の取得状況などが一目でわかるようにしておきましょう。

2019年4月から、中小企業を含むすべての企業に対して、有給休暇の年5日取得義務化や、労働時間の正確な把握が義務付けられるようになりました。2020年4月からは、中小企業にも残業時間の上限規制が適用になっています。
法改正に対応するためには、残業と有給休暇取得状況を従業員別に正確に把握する機能が必要です。

就業データ管理

出退勤時間や有給の履歴等から、毎月の総労働時間、欠勤日数、残業時間などを自動計算できるようにしておきましょう。
これらの情報は、給与計算や法令遵守に役立ちます。

さらに、従業員全体の残業時間の集計や推移の把握ができるようにしておくと、無駄な残業の洗い出しや業務効率化にもつなげられます。出退勤システムを単純な給与計算や労働時間の把握のためだけに使うのではなく、経営改善にも活かしていきましょう。

エラーチェック

エラーチェックとは、出退勤ボタンの押し忘れなどがあった場合にエラー表示を行う機能です。メール等で通知できるようにしておけば、打刻忘れがあってもすぐに気づけるでしょう。

また、シフトに入っていないはずの日に打刻したり、予定のない休日出勤を打刻しようとした際にアラートを出したり、エラー表示させて事実確認を行ったりといった形でも役立てられます。
さらに、残業時間の集計機能と組み合わせて、月の残業時間が一定以上になった従業員にアラートを出すといった使い方もできます。

勤怠管理システムを自作する方法

勤怠管理システムを自作する方法を4ステップでご紹介します。
すべてを一度に作り上げることはできませんから、やらなければいけないことを分解して、ひとつひとつクリアしていきましょう。

STEP1.データ項目・構造を設計する

最初に、システム上で管理する項目や勤務体系を書き出しておきましょう。開発をしながら項目を決めていくと、抜けが出てしまう恐れが高まるからです。

システム開発を行う従業員ひとりに責任を負わせないためにも、最終的にあるべき項目を明確にしておくことが役立ちます。
<一般的に必要と思われる項目>

  • 部署名
  • 社員番号
  • 従業員氏名
  • 出社時間
  • 退社時間
  • 休憩時間
  • 労働時間
  • 残業時間
  • 深夜残業時間
  • 休日出勤
  • 遅刻
  • 早退
  • 欠勤
  • 有給
  • 労働時間等の集計項目

勤務体系は、それぞれの企業の就業規則に応じて定めます。特に、出張や社外常勤、テレワーク、シフト勤務などイレギュラーな働き方をする従業員がいる企業では、注意深くすべての出勤パターンを書き出す必要があります。

STEP2.他システムとの連携の有無を決定する

勤怠管理システムで集計したデータは、給与計算システムなど別のシステムで利用する可能性があります。連携が必要なシステムをあらかじめ洗い出しておきましょう。

連携を前提としてシステム開発を行えば、双方の項目にずれが出ないように定義をそろえる、といった対処をとりやすくなります。手作業でデータを転記したり、取り込み可能な形に修正したりする必要があると、業務効率が悪くなります。スムーズにデータを取り込める形を目指しましょう。

STEP3.自社に合わせた打刻方法を考える

勤怠管理システムの打刻方法には、パソコンやスマートフォンを使ったもの、ICカードを使ったもの、チャットシステムを使ったものなどが挙げられます。

勤怠管理システムを自作する場合は、社内の打刻用パソコンを利用した打刻や、インターネットを介して自分のパソコンやスマートフォンから打刻できるシステムなどが扱いやすいでしょう。
テレワークの有無や、同じ事務所で働く従業員の人数などに応じたシステム
を検討してください。

STEP4.システムの設計・開発をおこなう

必要な内容が明らかになったら、システムの具体的な動作を定めて開発を進めます。

ただし、勤怠管理システムは作成して終わりではありません。プログラムを組む場合も、Excelで作成する場合も、将来の法改正に応じてメンテナンスを行う必要があります。第三者が見ても構造がわかりやすく、メンテナンスしやすいシステムを目指してください。

勤怠管理システムを自作する際の注意点


勤怠管理システムを自作すれば、それぞれの企業の業務内容にぴったり合ったシステムが作れます。しかし、勤怠管理システムの自作には注意点もあります。導入前に、どのような点に注意すべきなのか知っておきましょう。

業務の属人化リスク

勤怠管理システムを社内の限られた担当者だけで開発した場合、システムを理解している従業員に業務が集中し、結果として属人化してしまう恐れが高まります。

そもそも、勤怠管理システム導入のメリットのひとつに「業務の属人化を防ぐ」ことが挙げられます。ところが、システム化を行っても、開発が社内の従業員だと、結局問題が解決しない可能性があるのです。
システムのメンテナンス方法や動かし方を複数の従業員が十分理解しておく必要があります。

不正・改ざんが容易

特にExcelで勤怠管理システムを作成した場合は、不正や改ざんに注意をしたり、チェック体制を整えたりする必要があるでしょう。

たとえば、Excelに出勤時間を自分で入力するような勤怠管理システムでは、簡単に出勤時間の虚偽入力ができてしまいます。出勤ボタンを押すと自動で時間が入力されるといったシステムでも、直接数字を書き換えられるシステムでは意味がないでしょう。
また、悪意がなくても、操作ミスでデータを消してしまったり、誤った内容を記録したりする可能性があります。

手間や費用がかかる

自作の勤怠管理システムは、一見コストをかけずに利用できるようにも思えます。しかし、実際にはシステムを作成する従業員の人件費がかかっています。

もっとも、Excelのテンプレートをダウンロードして利用する程度であればそれほどコストはかからないでしょう。一方、本格的なシステム開発をするのであれば、どうしても費用がかかります。
さらに、法改正に応じたメンテナンスを行う際には追加コストがかかる可能性がある点にも留意しておきましょう。

(まとめ)勤怠管理システムの自作は注意点を考慮しよう

勤怠管理システムを自作すれば、コストを抑えてシステムの導入ができるかもしれません。

しかし、十分な機能を備えた本格的なシステムを開発しようとすると手間とコストがかかります。そのうえ、それに見合った成果が得られるとは限りません。将来的なメンテナンスも必要になるため、長い目で見て検討する必要があるでしょう。
自動的にシステムアップデートが行われるリーズナブルな勤怠管理システムの導入についても、合わせて検討してみてください。

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