物流DXとは?基礎知識や課題・推進事例も5選紹介

物流DXとは、物流業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)のことです。

現物の商品を扱い、トラック等で運ぶ物流業界においては、デジタル化よりも人力による対応を主としている企業が多くあります。しかし、人手不足解消やドライバーの働き方の改善、業務効率化のためには、物流DXの推進が必要です。

これまでの業務の在り方を見直し、デジタル技術を活用することで企業成長や競争力の向上を目指していきましょう。

物流DXの意味や、成功事例について紹介します。

物流DXとは?

物流業界におけるDX「物流DX」は、国土交通省も推進している重要な課題です。物流DXとはそもそもどのようなものなのか、定義と具体例について解説します。

物流DXの定義

物流DXとは、物流業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)のことです。

そもそもDXとは、デジタル技術を取り入れることによる業務改革を指します。単純にこれまで人の手で行っていた仕事をデジタル化するのではなく、デジタル技術によってビジネスモデルそのものを変革し、企業成長を目指すのがDXの考え方です。

物流業界では、これまでドライバーが柔軟な対応を行ったり、長時間労働をしたりと人力で業界を支える働き方をするケースがありました。しかし、このやり方では従業員に多大な負担がかかってしまいますし、いずれ立ち行かなくなったり、ミスが起こったりするリスクが高まります。

国土交通省も「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」において、デジタル化によってこれまでの物流の在り方を変える「物流DX」を推進するとしています。物流DXは、日本の物流業界全体が取り組んでいくべき課題だといえるでしょう。

物流DXの取り組み

DXは、既存オペレーションの改善や働き方改革の実現など、さまざまな目的で物流業界に取り入れられています。

<物流DXの例>

・受注から請求までをデジタル管理して、業務の可視化と分析を行い経営判断に役立てる

・空車情報をリアルタイム共有できる、物流業者と荷主企業の物流マッチングサービス

・在庫管理からピッキング、仕分けなどをデジタル化して荷積み効率と正確性をアップ

・配送データのAI分析によって顧客動向を把握

・ドラレコやデジタコと連動する運輸管理システムの導入による遠隔状況把握

・各種データのクラウド共有による情報伝達

・トラック予約システムの導入による待ち時間の削減

物流DXの課題

今後の物流業界の発展に重要な物流DXですが、推進には課題もあります。

これまでの物流業界では、デジタル技術の利用がそれほど活発ではありませんでした。独自のやり方でうまく仕事を回せていたことから、新たな技術を使った革新が進みにくいケースもあります。

物流DXの2つの課題を見てみましょう。

物流現場のデジタル化への理解不足

物流業界には、デジタル技術を積極的に取り入れずに運営してきた企業が数多くあります。このような企業では「本当にデジタル化が必要なのか」という疑念から、デジタル化が進みにくい傾向があるでしょう。

これまでデジタルを利用しなくても仕事を回せていた企業では、新しいことに費用や時間を使うよりも、これまで通りの働き方をした方が良いと考えてしまいがちです。仮に事業主側がDXに取り組もうとしても、従業員が「長年の経験でやっているものを機械任せにはできない」と抵抗したり、現場に合わない導入によってかえって手間が増えてしまったりするケースがあります。

さらに、人手不足から、DXの推進や研修に時間がさけないといった問題を抱えるケースもあります。

拠点独自の管理方法があり統一されていない

物流業界においては、ひとつの企業がすべて同じやり方で仕事をしているとは限りません。現場任せになっている作業も多く、拠点ごとに独自のルールで作業が行われていることもあります。

このような企業では、本社が主導してDXを推進しようとしても、そもそも各拠点での仕事の仕方が異なるため、業務内容の把握自体が困難になります。

DXの推進のためには、現在の業務フローを確認し、IT技術による最適化や、より良いフローの検討をしなければいけません。しかし、現在のフロー自体が統一されていなければ、目指すべき目標や課題も変わってきます。

さらに、本社側が物流DXを導入してやり方を変えようとしても、現場にマッチせずにかえって非効率的になってしまう可能性もあります。

物流DX推進事例5選

国土交通省による「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」から、実際の物流DXの成功事例5選を紹介します。物流DXに成功した企業の事例を参考に、自社のDXの進め方について検討してみましょう。

三菱商事:シェアリング型倉庫利用サービス

三菱商事では、全国の倉庫を検索できる「WareX」というサービスを提供しています。

物流業界においては、各社が協力して共同配送を行うといった取り組みが行われています。そこで、三菱商事では「倉庫」を複数の企業がシェアすることで無駄をなくし、効率よくスペースを活用するサービスとして「WareX」をスタートさせました。

実際に、輸出貨物の入荷から出荷までの荷捌きのために倉庫を利用していた運送会社では、閑散期の倉庫の空きを活用するために「WareX」を活用しています。

顧客と個別に条件交渉するのではなく、条件が合う相手とシステム的にマッチングできるため、効率よく最小限のやり取りで倉庫の有効活用ができているということです。また、利用者にとっても、保管スペースが急に足りなくなった際、効率よく保管場所を確保できるというメリットがあります。

トヨタL&F:自動アンローディング/ローディングロボット

トヨタL&Fでは、荷下ろしや積み込みのためのロボットを開発しています。

従来型のロボットでは、対応できる箱のサイズが1種類でしたが、実際の現場では、同一サイズの荷物だけを扱うケースは少なく、さまざまな大きさの箱を取り扱います。

そこで、トヨタL&Fは新しいロボット「ULTRA Blue」を開発しました。「ULTRA Blue」は、底面サイズが同じであれば、高さが異なる箱であっても縦積みにすることが可能です。さらに、横積み方式であれば、サイズが異なる箱も扱えます。

複数のセンサーを搭載することで自律走行を可能にした「ULTRA Blue」は、自律走行と自動荷役で、荷下ろしと積み込みにかかる手間の大幅な削減を可能にします。

佐川グローバルロジスティクス:RFID・仕分けシステム

佐川グローバルロジスティクスは、倉庫作業における生産性向上のために、ふたつのシステムを導入しました。

ひとつ目が、商品のRFID(無線通信自動認識システム)を読み取って検品を行うシステムです。これによってゲートを通すだけで検品を完了できるようになり、検品にかかる手間が大幅に削減されました。

ふたつ目が、仕分け作業を自動で行える「t-Sort」です。RFIDシステムを連携させることで、商品情報の入力作業も軽減できます。

ふたつのシステム導入によって、作業自体が効率化されただけでなく、ミスの軽減や業務習得にかかる時間の削減も実現しました。

インテンツ:電子マニュアルツール

宅配業を営むインテンツは、これまで紙で配布していたスタッフ向けマニュアルを電子化しました。

紙のマニュアルは、改訂やスタッフへの配布に手間がかかることから、最新の情報共有が困難でした。そこで、電子マニュアルツール「Teachme Biz」を利用して電子マニュアルを作成したのです。

マニュアルが電子化したことで、スタッフはスマートフォンから必要なマニュアルをすぐに閲覧できるようになりました。

「Teachme Biz」は画像の挿入も簡単で、ステップ形式のわかりやすいマニュアルを整備できたということです。これによって、研修時間の短縮や紙のマニュアルを配布する手間の軽減、スタッフへの確実な作業指示の実現といった効果が出ています。

KDDI:配送ドローン

長野県伊那市では、高齢者などの食料や日用品の買い物が困難という課題を抱えていました。

そこで、2020年から、KDDIのスマートドローンを活用して買い物をした商品を届ける「ゆうあいマーケット」サービスを行っています。

「ゆうあいマーケット」では、ケーブルテレビの画面で注文した商品が、ドローンで近隣の公民館に届きます。店舗まで出向くのが難しい高齢者も、公民館までであれば無理なく外出できるでしょう。また、自分で公民館に行くのが困難な方へは、ボランティアが配達を行っているということです。

ケーブルテレビを活用することで、住所などの入力をしなくても買い物ができ、支払いもケーブルテレビ利用料と同時に引き落としになります。手間なく便利ということで、買い物が困難な方に支持されています。

まとめ

未だ人力に頼った作業を行っていることも多い物流業界ですが、DXを進めている企業も多くあります。人手不足対策やミスの軽減、無駄の排除のためには、物流DXを推進していく必要があるでしょう。

ただし、DXはやみくもにデジタル技術を導入すれば良いというものではありません。自社の抱える課題を解決するためにデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを改革していくことが大切です。できるところから、物流DXを始めましょう。